空き家を相続すると、「住まないが、すぐにも売れない」「相続税の対象になるのか」「放置してよいのか」と悩まれる方が少なくありません。空き家は不動産として相続財産に含まれ、相続税の判定や遺産分割、登記、管理、売却まで、論点が一度に重なりやすい財産です。出典:国税庁「No.4105 相続税がかかる財産」

結論からいうと、空き家は放置せず、①誰が相続するか→②相続登記→③相続税の判定→④売却方針の順に進めるのが基本です。売却では、一定の要件を満たせば「相続空き家の3,000万円特別控除」の適用余地があります。この記事では、相続税・売却・特別控除までを相続専門税理士が解説します。

この記事でわかること
  • 空き家を相続した直後に確認したいこと
  • 空き家の相続税評価と基礎控除の考え方
  • 相続登記の義務化のポイント
  • 空き家売却の3,000万円特別控除の要件と期限

まず確認したいのは、誰が相続するのか・使う予定があるのか

空き家相続では、売るか残すかの前に、誰が取得するかを決める必要があります。共有にすると当面まとまりやすく見える一方、後の管理や売却で意思決定が難しくなることがあります。相続人同士の距離感や今後の利用予定まで踏まえて考えることが大切です。

また、空き家であっても固定資産税、修繕費、管理負担は続きます。利用予定が薄い場合は、早めに売却方針を含めた検討に入るほうが、結果的に負担を抑えやすいことがあります。

空き家の相続税評価|不動産として基礎控除額とあわせて判定する

空き家は使っていなくても不動産ですから、相続税の対象になるかを判定するためには評価が必要です。土地と建物を分けて把握し、ほかの預貯金や保険金と合算して基礎控除額を超えるか確認します。相続税がかかるかどうかは、3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算する基礎控除額が基準になります。出典:国税庁「No.4102 相続税がかかる場合」

実家だけなら税金は出ないと思っていても、預金や保険金を含めると申告対象になることがあります。

相続登記は後回しにしない(令和6年4月から義務化)

不動産を相続した場合、令和6年4月1日から相続登記の申請が義務化されています。法務省によれば、相続により不動産の所有権を取得した相続人は、その取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。正当な理由なく怠った場合、10万円以下の過料の対象となることがあります。出典:法務省「相続登記の申請義務化について」

売却するつもりだから後でまとめて、という考え方は通りにくくなっています。空き家は特に相続人間で放置されやすいため、先に名義を整える意識が重要です。

空き家の売却|相続空き家の3,000万円特別控除を確認する

一定の要件を満たす場合、被相続人の居住用家屋やその敷地を相続した相続人が売却すると、譲渡所得から3,000万円を特別控除できる制度があります。国土交通省は、相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、一定要件を満たして譲渡した場合に適用されると案内しています。出典:国土交通省「空き家の発生を抑制するための特例措置」

さらに令和6年1月1日以後の譲渡では、譲渡後、一定期日までに耐震改修や取壊しをした場合も対象に含まれる拡充があります。[同出典]

3,000万円特別控除の要件は?(国税庁No.3306にもとづく全要件)

この特例(被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例)は便利ですが、誰でも自動的に使えるものではありません。国税庁は、対象となる家屋・敷地の要件、売却の方法ごとの要件、期限や金額の要件、添付書類までを細かく定めています。以下では、実務で確認すべき順に整理します。出典:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(令和8年4月1日現在法令等)

① 対象となる「被相続人居住用家屋」の3要件

相続の開始の直前において被相続人が居住の用に供していた家屋で、次の3つすべてに当てはまるもの(主として居住の用に供されていた一の建築物に限る)が対象です。

  • 昭和56年5月31日以前に建築されたこと
  • 区分所有建物登記がされている建物でないこと(分譲マンション等は対象外)
  • 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと

なお、要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所していたなど特定事由により、相続開始の直前に居住していなかった場合でも、一定の要件を満たせば、居住しなくなる直前まで住んでいた家屋(従前居住用家屋)が対象になります。この場合の要件は国税庁コード3307で示されています。出典:国税庁「No.3306」「No.3307 被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋」

② 対象となる「被相続人居住用家屋の敷地等」の範囲

  • 相続開始の直前(従前居住用家屋の場合は居住しなくなる直前)において、その家屋の敷地の用に供されていた土地またはその土地の上に存する権利であること
  • 母屋と離れなど用途上不可分の関係にある2以上の建築物がある一団の土地であった場合は、建物の床面積の合計に占める母屋(被相続人居住用家屋)の床面積の割合で按分した部分のみが対象

③ 売却のしかたごとの要件(イ・ロ・ハのいずれかに該当すること)

まず、売った人が相続または遺贈(死因贈与を含む)により被相続人居住用家屋および敷地等を取得した相続人(包括受遺者を含む)であることが前提です。そのうえで、次のいずれかの売却に当てはまる必要があります。

  • 【イ】家屋を売るか、家屋とともに敷地等を売る場合…家屋・敷地等が相続の時から譲渡の時まで事業の用・貸付けの用・居住の用に供されていたことがなく、かつ譲渡の時において一定の耐震基準を満たすこと
  • 【ロ】家屋の全部を取壊し等した後に敷地等を売る場合…家屋は相続の時から取壊し等の時まで、敷地等は相続の時から譲渡の時まで事業・貸付け・居住の用に供されていたことがなく、さらに取壊し等の時から譲渡の時まで建物または構築物の敷地の用に供されていたことがないこと
  • 【ハ】(令和6年1月1日以後の譲渡限定)家屋を売るか家屋とともに敷地等を売る場合で、相続の時から譲渡の時まで事業・貸付け・居住の用に供されておらず、譲渡の時からその譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの間に、一定の耐震基準を満たすこととなった、または家屋の全部の取壊し等を行ったこと

【ハ】が加わったことにより、従来は売主が引渡し前に耐震改修や解体を済ませる必要があったケースでも、買主側で翌年2月15日までに実施されれば対象となり、実務上の使いやすさが大きく改善しています。

④ 期限・金額・重複適用に関する共通要件

  • 譲渡期間…平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間の売却であること
  • 譲渡期限…相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
  • 金額要件…売却代金が1億円以下であること
  • 他の特例との関係…売った家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(取得費加算)や収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと
  • 重複適用の禁止…同一の被相続人から相続または遺贈により取得した家屋または敷地等について、すでにこの特例の適用を受けていないこと
  • 売却先の制限…親子や夫婦など「特別の関係がある人」への売却でないこと(生計を一にする親族、売却後にその家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人等を含む)

⑤ 見落としやすい「1億円判定」の合算ルール

1億円以下かどうかは、売った年の代金だけで判定するわけではありません。一体として利用していた部分を分割して売却している場合や、他の相続人が売却している場合は、相続の時からこの特例の適用を受けて売却した日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に売却した部分も含めた合計額で判定します。

このため、いったん1億円以下として特例を適用していても、その後に残りの部分を自分や他の相続人が売却して合計額が1億円を超えたときは、その売却の日から4か月以内に修正申告書の提出と納税が必要になります。共有で段階的に売る場合は特に注意が必要です。

⑥ 控除額は3,000万円だが、相続人が3人以上なら2,000万円

控除できる金額は譲渡所得の金額から最高3,000万円までですが、令和6年1月1日以後に行う譲渡で、家屋および敷地等を相続または遺贈により取得した相続人の数が3人以上である場合は、最高2,000万円までとなります。きょうだいが多いご家庭では、想定より控除額が小さくなる点を織り込んで試算する必要があります。

⑦ 確定申告で必要になる主な添付書類

この特例は、一定の書類を添えて確定申告をすることが適用の条件です(申告先は所轄税務署)。家屋を売る場合の主な書類は次のとおりです。

  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]
  • 売った資産の登記事項証明書等…相続または遺贈で取得したこと、昭和56年5月31日以前の建築であること、区分所有建物登記がされている建物でないことを明らかにするもの
  • 被相続人居住用家屋等確認書…資産の所在地を管轄する市区町村長から交付を受けるもの(被相続人の居住状況、相続後に事業・貸付け・居住の用に供していないこと、老人ホーム入所等の事情、取得した相続人の数などを確認した書類)
  • 耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し…譲渡の日前2年以内に証明のための調査が終了または評価されているものに限る
  • 売買契約書の写しなど、売却代金が1億円以下であることを明らかにするもの
  • 家屋を取壊して敷地等を売った場合…上記のうち内訳書・登記事項証明書等・売買契約書の写しに加え、取壊し等に関する事項を確認した被相続人居住用家屋等確認書
  • 翌年2月15日までに耐震改修または取壊しを行った場合(令和6年1月1日以後の譲渡)…耐震基準適合証明書等の写し、または期間内に全部の取壊し等をした旨を証する登記事項証明書その他の書類

なお、土地・建物の登記事項証明書は、「譲渡所得の特例の適用を受ける場合の不動産に係る不動産番号等の明細書」に不動産番号を記載することなどにより、添付を省略することができます。根拠法令等:所法33、措法35、措令20の3・23、措規18の2

市区町村が発行する被相続人居住用家屋等確認書は、申請から交付まで一定の期間を要することがあり、さらに相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日という譲渡期限も並行して迫ります。そのため、売却方針が見えた時点で、不動産実務(解体・耐震改修・買主との条件調整)と税務(要件確認・書類手配)を並行して進めることが大切です。

実際の相談事例:空き家をめぐる相続の進め方

税理士の視点(佐藤智春)

空き家相続では、税金より先に「誰が動くのか」が曖昧になりやすい印象があります。ところが実際には、登記、管理、売却、申告期限がそれぞれ別々に進むため、初動の整理が遅れるほど選択肢が減ります。相続税が出るかどうかにかかわらず、空き家は早めに現状整理を始めるのが実務的です。

まとめ|放置せず、期限と要件を確認しながら進める

空き家を相続したら、まず相続人、利用予定、登記、管理方針を整理し、そのうえで相続税の判定と売却の可否を検討する流れが重要です。売却では、一定要件を満たせば3,000万円特別控除の適用余地もあります。放置せず、期限と要件を確認しながら進めることが大切です。

空き家の相続に関するよくある質問(FAQ)

空き家なら相続税はかかりませんか?

かからないとは限りません。不動産として評価し、他の財産と合算して判定します。

相続登記をしないまま売れますか?

通常は登記整理が必要です。加えて、相続登記には義務化のルールがあります。

3,000万円特別控除は必ず使えますか?

いいえ。被相続人の居住状況や譲渡時期など、複数の要件を満たす必要があります。

空き家を放置するとどうなりますか?

固定資産税や修繕・管理の負担が続くほか、周辺への倒壊等のリスクから行政の指導対象になることもあります。早めの現状整理が重要です。

「実家をどうするか決められない」というご家庭こそ、早めの現状整理が大切です。 初回相談は無料です。登記・管理・売却まで含めた手順を一緒に整理してみませんか。みらいえ相続税理士法人の無料相談はこちら

代表税理士 佐藤智春
執筆・監修:佐藤 智春(税理士・みらいえ相続税理士法人 代表社員)
税理士登録番号 108030

相続税を専門に扱う税理士として、複雑な家族関係・分散した財産・期限目前のご相談に、財産調査から申告・納税まで一貫して対応しています。本コラムの事例は、実際に担当した相談を個人が特定されない形で抽象化しています。

本記事は実際のご相談に基づき、個人が特定されないよう情報を抽象化しています。掲載内容は一例であり、税額・節税効果・完了までの期間・対応の可否・制度の適用可否は、財産の構成や資料の状況、その時々の事情により異なります。また、当法人の過去の実績や記録が、将来の成果を保証するものではありません。